
――ズブっ。
一瞬世界が揺らいだように彼女は思った。そして自分が宙に浮いているような奇妙な浮遊感覚。実際、橙子は浮かんでいた。つま先がホールの敷地から数センチ浮遊している。なぜかにじみ始めた視界を少し下げると、自分の腹がふくらみ上がっているのが見えた。白いシャツははじけ飛び、ほっそりした美脚を守っていたスラックスはちぎれて女のもっとも隠すべき箇所がさらけ出されている。
それほど豊満とも思わない乳房のあたりまでふくらんだ皮の先には、
歪な凹凸が四つ見えた。
あぁ、これは手の甲か。
ここに至って彼女は理解した。
自分は敵の腕に秘所を貫かれ、子宮の奥まで貫き通されてしまったのだ――。
その事実を認識したとたん、女魔術師の全身に言いようもない感覚がわき起こってきた。
「――ぁ……ふぁ……っ――くぅ――あぁ……!」
ほとんど無表情に近かった橙子の顔にさぁっと赤みが差し始めた。残酷なまでに怜悧に輝いていた瞳が潤み始め、涙がにじむ。
女魔術師の全身がカタカタとふるえ始めた。全身の毛穴という毛穴が開き、内から汗が絞り出されてくる。しかしそれは冷や汗などというねっとりしたたぐいの物ではなかった。甘ったるくほの香り、きめの細かい肌を彩るかのようにきらめく珠のようなしずく。橙子の周囲だけが女子校の更衣室のような雰囲気を帯びた。
「ふぁ……ぁぁ……ぉ……っ……」
殺意に満ちた静謐な空間にこぼれ出す橙子の声は、苦悶のそれではなかった。どこか熱っぽく湿り、普段の彼女ならば――少なくとも眼鏡をかけていない彼女ならば――絶対に出さない音階の響き。アとオの中間程度に開かれた口の端からよだれが一筋こぼれ落ち、ほおを伝ってこぼれ落ちた。
今の女魔術師の表情は、暗黒すら食らい尽くす人形をも作り上げる『希代の人形師』と言われた時のモノではない。『蒼崎橙子』というメスの顔だ。
(ここまで凄いのは……久しぶり……だな……さすがに――堪らない……)
魔術の研究を志す物にとって性愛のシステム探求は避けて通れない道である。故に彼女もその行為を幾度となく経験したことがあった。その橙子にしてもこれほどまでに壮絶な性交は初めてだ。
(なるほど……な……子宮の中……か……)
意外に薄い肉壁をごりごりと拳でえぐられるたびに全身に甘い痺れが走った。子壷全体が熱く燃え上がりじんじんと疼くような感触がたまらなく心地良い。麻酔を打たれたかのように甘く麻痺していくこの器官も間違いなく快感受信器官なのだと言うことを橙子はイヤというほど思い知った。
肉体が自分の意志と切り離されて勝手にビクリと弓なりにのけぞり返り、結果としてより強く敵の腕を腹の内で感じてしまう。今までに受け入れたどんな肉棒よりも堅く、そしてたくまししい異物は橙子の女としての部分をこれ以上ないほどに刺激した。ささやかな胸の頂きで小さな肉突起が堅くとがってびくびくと切なげに震え、何かにさわられるのを待ち望んでいるかのようだ。その反応は極太を受け入れた股間も同じだった。女性の快感神経がもっとも集中するクリトリスもが勃起しきってい
る。
橙子の全身がひときわ強く震えた。それと共に無惨なまでに拡張された秘唇からプシャッと勢いよく愛液が噴出した。たくましい腕にからみつきながら滴り落ちていく密は白く濁り、全身から放たれる汗などとは比較にならないほど濃い発情臭を放っている。
「くはぁぁぁっ……はぁ……あっっっ―――ぁ! ……ぅ……ぉっ……」
(また……絶頂った――か……。勝手に子宮が締まって……膣が荒耶の腕をもみしぼっている、か。まったく……浅ましいことだ……)