小説
神域の檻

「――ぁ! っ……んみゅぅうっ!?」
 ほんの一瞬口を開けた隙に触手が飛び込んでくる。桜色の唇を割り裂き、舌を押し込んで一気に気管まで押し入ってしまう。
「むぅぅっっっ!? むううう!!」
(の、喉が……!? く、くる……)
 気道を圧迫されたことで軽い酸欠症状が起こった。ただでさえ股間から連続で送り込まれてくる絶頂級の快感で脳が痺れているというのに、更なる追い打ちである。
 食道をも通過し、触手は胃にまで到達した。そこで、想像を絶するような責めに出たのである。
 びるぅっ、びゅるるっ……。
「!?!?」
(お、お腹の中に……なにか……!?)
 なんと直接内臓器官へと淫液を放ってきたのである。
(ん……むぅ……こ、い……)
 悪魔の淫毒が胃粘膜から直接吸収される感覚は異常ですらあった。幾度と無く淫らな戦いを繰り広げてきた真鈴にとっては、今更媚薬など驚くにも値しない。とっくに耐性も出来ていたし、並大抵の媚薬であれば流されない自身は十分にあった。……のだが。
 特別に濃厚な淫液は、胃の中にあってさえもその存在が明らかに分かった。半ばゲルにも近い濃度を保った媚毒が胃液に消化され、吸収される。全身の血流に熱湯を流されたかのようだった。意思とは関係なく体温が上昇し、ビスクドールのように真っ白だった肌が今では風呂上がりのように真っ赤に茹だっていた。
(これは……いけない……)
 ぽぉっとしかけた頭の中で、歴戦のエクソシストとしての経験が警鐘を鳴らしていた。半ば反射的に口中にある触手をしゃぶり上げてしまう。熱く火照った下にたっぷりと唾液を乗せ、ざらついた触手を丁寧に丁寧にねぶり回してやる。その度に真鈴の舌に負けず劣らず火照りきった肉の棒が嬉しげにのたうち回って胃の中へさらなる媚毒を発射する。
「んくっ……んむぅ……く……」
 ぢゅぱっ、ぢゅぱっという淫らな音を立てながら繰り返される、濃密なディープスロート。悪魔も性を真鈴の中に放ち、確実に弱まってきているはずだが、彼女自身もまたこれまでにない昂ぶりを感じていた。
 真鈴のスレンダーな身体にフィットした修道服が、甘酸っぱくほの香る発情汗にしっとりと濡れてより一層密着する。うっすらとした潤いを保った漆黒の生地は月明かりを照り返し、淫らな聖女の姿をより一層妖しく輝かせていた。
 そんな真鈴の姿に興奮したか、悪魔もその本性を露わにして聖女を貪りにかかった。胃の中へはき出されていた淫液が、今度は胃壁その物へと直接塗布される。
 じゅりゅっ、にゅりゅぅ……!
「!! っ……! く……」
 修道服の腹が一瞬盛り上がった。内臓から突き破られそうな疼痛がわき起こる。
(まさか……このまま……?)
 一瞬、悪魔が勝負を捨てて内部から自分を突き殺すのではないかという予感がした。しかし、それはあり得ないと直ぐに修正する。性欲の権化である彼らは良くも悪くも性に対しては従順である。極上の肉体を食い散らからすなどと言うことはないのだ。これは高位の悪魔であればあるほどそうで、今回の場合は間違いないと言い切ってもいい。信用できる敵だからこそ、この戦いが出来る。
「……んぁっ……」
(……ん……皮肉な……ものですね……)
 二度目の痛みと共に、へその上がぽこりと盛り上がる。キリキリとした痛みに一瞬うめき声をあげて軽くのけぞり返る真鈴。さしもの退魔シスターとはいえ、内臓器官を直接犯される痛みには耐えがたい。
 しかし、それもそう長い間のことではなかった。三度目の突き。いや、それは突きではなかった。何かぬめった物が胃壁をなぞり上げている。
「う……む……うむぅうううっっ……!?」
 急激にお腹がぶわっと熱を持った。まるで身体の内部から真鈴を焼き尽くしてしまうのではないかと言うほどの熱さだ。しかし、それは直ぐに甘い炎に変貌し、聖少女の全身を覆った。
「あ……お……あお、おぉ……!」
 触手に未だ占領されたままの口から甘いうめき声と、大量の涎がこぼれ落ち始めた。純白の手袋に包まれた両手が触手をきゅぅっと握りしめ、ブーツの中の足指も我知らずの内に丸まってしまう。全身が、あまりの悦びに痙攣してしまう。ふるふると震えて紫色の髪が頬をくすぐる。それだけでも、性の戦いに勝ち抜いてきた戦闘尼僧が生娘のように喘ぎをこぼしてしまうのだ。
(……胃粘膜に……直接淫毒を……!)
 お腹の中から止めどなくわき上がってくる愉悦。そう考えるしかなかった。めくるめく甘い快感の嵐が真鈴の体内で吹き荒れる。ズクンズクンと腹の中が疼くたびに、背筋が勝手に反り返ってしまう。悪魔の淫手で豊乳化された肉毬が切なげに震え、硬く勃起した乳首が修道服の裏側に擦れるピリピリとした感覚だけで達しそうになってしまう。

(文:高橋良喜 イラスト:呉マサヒロ)

イラスト


MISS BLACK(ショートストーリー付き)


無望菜志


なかざわひのと

 

小説 :高橋 良喜
イラスト

:MISS BLACK
:呉マサヒロ
:なかざわひのと
:無望菜志

初版発行 :2006年10月01日(サンシャインクリエイション33)