12月31日の奇蹟
2006年12月31日。その日はコミックマーケット71の三日目、最終日だった。この年の10月に前代表米沢さんがお亡くなりになられ、それから初めてのイベント。
12月31日、最終日に故米沢前代表に黙祷を捧げようという事がカタログに書いてあった。時間は閉会直前15時59分。
10時00分にイベントは始まり、その瞬間が訪れるまで、何も変わらなかった。私が居たのは東123ホール。私も本を売り、皆も本を買い、おしゃべりする。行き交う人の足跡、濃い会話の飛び交う喧噪、台車が鳴らす鉄輪の音。何もかもが普段のコミックマーケットであったように私には思えた。
そして、その時は訪れた。
15時59分。いつもの聞き慣れた声のアナウンスが館内一杯に響いた。全てを聞き取ることは出来なかったが、この声には万感の思いが込められているように私には聞こえた。
「黙祷。」
この言葉を合図に、全てが一つになった。
喧噪と混沌が支配する会場が一変し、すべからくの参加者が黙祷を捧げ、おしゃべりをやめ、動きを止めた。まるでラジオのスピーカーを絞りきったかのような静寂の一瞬。この瞬間に立ち会い、皆と一体になれたと分かったとき、私は自分がこの場にいられたことに対する言いようのない幸福感を感じた。なんでかと問われても論理的に答えることは出来そうにない。
私は宗教を信じないが、例外として皆の哀悼は間違いなく天に届いたのだ、と確信している。そして、立ち止まり、これからもコミックマーケットという場を見守り続けているであろう故米沢代表に対し、我々はこの場を慈しみ、守り、育てていくという連帯感のメッセージを伝えられたのだろうと思っている。
私はこれからもコミックマーケットという場に居続けるだろう。『2006年12月31日の奇蹟』を胸に留めていられる限り、その理念が失われない限り。
願わくば、2007年のコミックマーケットとその参加者、スタッフ一同に幸多からん事を。
それでは皆様、良いお年を。
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